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2010年6月10日 (木)

特定非営利活動法人アートスイッチ設立目的。

                                                                                             

                                                理事代表 櫻井栄一

特定非営利活動法人アートスイッチ設立目的

 アートによる地域貢献を理念と実践を両輪にして活動していくことを目的とする。活動した経過を研究、評価することで社会にたいするアカウンタビリティーを果たし、アートによる地域貢献の基盤を整備していくことを目指す。

 具体的には、イベント開催において作家の発表の場を確保することから始める。その他、美術館や作家のアトリエを巡るツアーや、作家によるシンポジウム等を開催する。これらひとつひとつの事柄を各個の単独したものとせず、地域に貢献できる方途を探りながら活動を行っていく。

・熊本のアートの現状。

最初に、熊本のアートに携わる人々としておおまかに二つの種類に分ける。

既存美術団体所属作家と無所属作家である。

美術団体所属の作家においては累々として築き上げてきた団体の歴史があり、団体ごとの筆頭作家においてのヒエラルキーが確立している。展示発表の場も県立美術館や古くからの画廊等、固定した発表の場を確保している。特徴の一つとして、若年層は比較的少なく、60歳以上においての団体所属者が多数を占める。

もうひとつが無所属の作家である。このタイプの作家は展示発表の場が極端に少ないか、今までアートの作品を展示する定番としての美術館や画廊のみならず、自己開拓した商スペースを展示場にしている者が多い。さらに各地で行われている展示販売イベントに多数参加する。作家が自分の作品だけで生活しようとした場合、既存の画廊や展示スペースでは収入が保てないので、営業やつてを使い、販売経路を増やすしかない。画商が行うような仕事も自分で行う。年齢層は20~40代が8割を占める。

そうなると、熊本県内で自分のスタイルに合った販売場所を探すことになり、熊本の地域経済とも無関係ではいられなくなる。

現在熊本の地域消費スタイルとして、車を運転できる層は衣食住と娯楽がそろった郊外型巨大商業施設で全てすます傾向にある。他方、いわゆるシャッターが目立つ各地の商店街では経営者も消費者も高齢化が進み、若年層の商店街離れがとどまる気配はない。熊本市中央街の歩行者通行量は、平成9年度と20年度を比較すると、34%もの減少となっている。新市街からくまもと阪神への桜町ルートにおいては50%近く減少している。

○平成8年度  サンピアンシティーモール開店。

○平成10年度 クリスタルモールはません開店。

○平成16年度 ゆめタウン光の森開店。

○平成17年度 ダイアモンドシティークレア開店。

その他にも上記の商業施設の導線となっている国道57号線沿いには、大きな商業施設が相次いで出店していて集客における激戦区となっている。

このように、激増する新興商業圏のなか、個人で制作する作家が作品を展示販売する商スペースが増えることは一切ない。巨大商業施設に入るテナントは主に大きな企業が占めており、テナント料も高く、個人が入り込む隙はない。

アートを生業とする各作家にとってもこの状況は深刻である。以前熊本中心街にあった販売力がある少数の貸画廊でさえ軒並みなくなってしまった。それに反比例するかのごとく低料金の貸しギャラリーはむしろ増えているが、販売力を備えているギャラリーは少なく、販売努力はおおむね借りた側である作家に委ねられている。低料金とはいえ週単位で35,000円~65,000円の賃貸料ともなれば月額にすればテナント家賃に匹敵する。

作品を展示販売する場所の確保が益々困難になっている現状の簡単な帰結として、創作するアトリエだけを熊本に置き、展示販売という経済活動を首都、大都市圏で行う作家が増えている。つまり、地域貢献に有力なツールであるアートそのものが、他県へ流出している。その最もたる例として、東京ビッグサイトにおいて年2回開催されるデザインフェスタの隆盛がある。つくる人の祭典を標榜するこのイベントは今や、全世界からツアーが組まれるほどの有力コンテンツになった。日本中の未だ可能性を孕んだ状態にあるアートを、ブース貸し、時間貸しという一元管理で紹介することで。現在では8,500人を超える参加者を集めるイベントに成長している。1994年初開催、今年で30回を超える開催を誇る。

しかしこのやりかたを地方のアートイベントとして即導入するには無理が生じる。多数の作家を確保したとしても集客動員が即見込めるとは考えにくいからだ。

○東京の人口 1300万人

○九州の人口 1470万人

○熊本の人口 180万人

単純に、この数字を見ても九州規模のイベントとして開催しなければ同じやりかたで同じ効果を期待することはできない。

デザインフェスタとほぼ同じ内容のアートイベントが名古屋でも開催されている。クリエーターズマーケットである。作家動員数は3000人。

○愛知の人口 740万人

東京の人口のほぼ半分であり、作家数もそれにみあったものとなっている。

熊本の人口と比例させれば750人の作家を集めればよいことになる。しかし、今現在熊本ではアートの祭典自体が開催されておらず、いきなりその人数を集めることは不可能だ。仮に集めたとして、使用会場は限られてくる。箱物としては真っ先にグランメッセ熊本が思い浮かぶが、仮にこのイベントを実施し、ある程度の収益を上げることに成功したとして当NPOが掲げる「アートによる地域貢献」ができたとは言い難い。それはどちらかといえば、「アートによる収益事業」といえるものだ。アートで特定の企業が事業収益を上げることと、作家個人の持つアートがどう社会に役立つように還元するかの関係性は今のところ希薄だ。こういった箱物企画は作家からブース代を徴収し、来場者から入場料を取ることで成り立っている。作家が魅力を感じて高い交通費とブース代を払うのは、膨大な来場者の中から自分がどこかの企業なりホワイトキューブなりに抜擢されるのではないかという期待感であり、そこまで望まなくても、東京に自分の作品の販路を求めての期待からだ。これらの条件を地方都市が満たすことは容易にはできず、相変わらず熊本で生まれたアートの都市への流出は続いている。

上記述べてきたとおり、単純に作家を箱物に集めて集客する方法論は都市部での有効性は実証されている。だが熊本は地方都市である。場所に見合ったイベントの形態を模索した中から、郊外型巨大商業施設でのアートイベント開催が生まれた。その経緯を次項述べる。

・アートスイッチのスイッチ、オン!理論

 前項で述べた通り、新興商業圏に熊本の商圏は拡大している。他方、県内各地の商店街の集客は厳しさを増している。

そんな最中、平成15年に熊本市河原町でアートによる町の再生というプロジェクトが始まった。特徴はアートを全面に出したパブリシティーであり、平成22年現在も毎月1回アートの日という作家によるマーケットを開催している。年に一度、河原町アワードも開催、賞の中にはくまもと阪神賞や毎年迎える特別審査員の賞など設けている。この試みは「町」とうい括りで行われ、今や県外からの参加者も現れるようになった。

 熊本県牛深市では天草在郷美術館という新しい試みが2006年より始まっている。館長の加藤笑平氏は東京葛飾生まれ。天草に住み、農家をリノベーションした美術館では現代美術の作家の企画展を催し、アンデパンダン展では全国から作品と作家が集まる。今、天草ではこの美術館と館長を中心とし、天草という自然豊かな環境の中でアートと地域住民そして美術館に由来する作家とがどう繋がっていくかという試みを行っている。

 熊本県山鹿市では、2010年から「湯の端美術展」という試みが始まった。豊前街道界隈という、八千代座を中心とした商店街で作品の展示販売とワークショップ、レジデンスを行った。まだ発足して間もない取り組みだが、古民家ギャラリー「百花堂」を中心とした企画で、アートを全面に打ち出した町おこしイベントとなっている。参加した作家に話を聞いたところ、作品もよく売れるし、来場者数も多いそうだ。具体的な動員数は把握していないが、イベントが続けば山鹿市にとっても有力なアートイベントのコンテンツになることは間違いない。

 熊本県玉名郡和水町では、2010年で8回目を迎える「里山美術展」が開催されている。和水町にある肥後古民家村の古民家を使い、様々なアートの作家が紹介されている。織物染色、ガラス工芸、陶器、平面、インスタレーション等のアートが展開されている。

 その他、熊本市中心街ではアートプレックス、まちなか美術展、阿蘇では「谷人たちの美術展」や全国から作家が移り住んでアトリエを構えており、西原村でも同じ様に作家がアトリエを構えている。

 この様に、県内各地でそれぞれにアートを主軸としたイベントや試みが行われている。それにも関わらず、これらの試みをよく知っているのは、アートに興味がある一定層に過ぎないのが現状である。

 各イベントがこのままバラバラの状態で行われる限り、熊本県のパブリックイメージはいつまでたっても「アート」にはならないであろう。「アート」が他県はもとより、全世界から集客できるコンテンツであることは明白にも関わらず。

 そこで、アートスイッチのスイッチ、オン!理論を活用することで、横の繋がりを生み出す試みを行う。

 アートスイッチとは、今現在熊本で進行中の上記アートプロジェクトをそれぞれつなぐスイッチとなるものである。

 休日の集客人数、公称4万人というイオンモール熊本クレアで、アートイベントを行うことを当初の主体とする。熊本県上益城郡嘉島町に存在する西日本最大級の郊外型商業施設である。広大な駐車場を備え、浜線バイパス沿いに位置するクレアは、熊本市西部のニューファミリー層の休日を過ごす選択肢の重要なひとつである。敷地の一角にはスパもあり、一日中クレアで用が足りてしまう程の専門店街を擁し、映画館などの娯楽施設も整う。

 唯一足りないものがあるとすればアートに関連する施設である。クレアにアートの施設がない理由としては、出資に見合う収益が上がらないということが挙げられるだろう。熊本西部のニューファミリー層には、今のところアートはなじみが薄いものである。

 このクレアで、アートイベントを行う。参加アーティストは、作品の展示販売を行うがそれだけでは参加できない。必ず自分なりの企画を行う。お客さま参加のワークショップであったり、巨大壁画の制作だったりと企画はアーティストの裁量で行うができる限りの質の向上を目指す。企画の質低下を防ぐため、事前に参加アーティストとは長期にわたり打ち合わせをし、クレアというスペースでできる限界に挑戦していく。展示販売のみでは参加できない理由として、ひとつには量では大都市圏のイベントに対抗できないことは明白なので、イベントの質を上げることで対抗するということがあるが、最大の要因はお客様のアートに対する理解度の問題がある。

 このイベントはアートに全く興味がないと想定されるクレアに買い物や遊びにきたお客様にアピールしなければならない。この点が既存のアートイベントや、画廊や美術館で展示するのとは違う。通常、アーティストはアートに理解があるお客様を相手にする。しかし熊本で名もあり実績もあるアーティストも、クレアではほぼ無名の一作家となる。そのときにライブペイントやワークショップこそがお客様の理解を得られる武器になるのである。その質が高ければ高いほど、アートに関心を持ってもらう一助になる。

 さらに一歩、深い興味を抱かれたお客様に、アーティストが主に活動している地域を紹介するという試みがある。本イベントに参加するアーティストは実に様々な地域を拠点としている。熊本市内はもちろん、植木、山鹿、阿蘇、天草、大津、熊本と東京を往復する者もいる。拠点のありかたとしては、単にそこにアトリエを構えていたり、作品の主な発表の場であったり、個人で美術館を称していたり、河原町に至っては町そのものがアートのプロジェクトであるなど実に様々である。

 アーティストが拠点としている地域の情景、アートスポット、イベントのあり様をお客様に紹介することで初めて、熊本の現在進行形アートシーンのほぼ全貌がイオンモール熊本クレアに現出することになる。

 今までは時間軸、空間軸ともに触れあう事もなく、それぞれが独自の展開をしていた熊本のアートプロジェクトが、そのプロジェクトの運営組織によってではなくアーティストによってこの場所でクロスオーバーするのである。地域振興系アートプロジェクトの運営組織は行政や、地域の商工会が行っている場合が多く例えば山鹿と阿蘇のプロジェクトが連携して動くことはない。ところが、そのイベントに参加するアーティストは、自分のイベントや拠点をもっと沢山の人に知ってもらうことが大変重要なのである。そのためにイベントに参加するのである。行政や地域の商工会等は組織で動く為、身軽に他のアートプロジェクトに参画することが難しいのが今までの流れであるが、アーティストは身軽に動くことができる。そこが大きな利点である。

 一般客4万人超を1日で集客するクレアで、自分の拠点をアピールすることの意義は大きい。拠点に来ていただきさえすれば、より奥深いアーティストの作品世界に触れていただくことができるばかりか、その地域にクレアからお客様を呼ぶことにもなるのである。その為には、アーティスト自身が拠点地域に対する理解を深める必要も出てくる。さらに、地域の方々にもアートスイッチの意義を理解していただく必要もある。各アートプロジェクトの特徴を生かしながら、アートスイッチというスイッチを介して繋がれていく新しい関係性こそがアートによる地域貢献に他ならない。

 お互いの理解を深めながらより連携の取れた体制を構築し、熊本県下のアートプロジェクトをそれぞれの独自性を保ちながら「熊本のアートシーン」というパッケージングで九州各県へ、ひいては全国へと発信していく行為の全てをアートスイッチ、オン!理論とする。

 アートスイッチ、オン!理論の実践の場が、イオンモール熊本クレアにおける、イベントアートスイッチである。今後このイベントを継続していくとともに、派生していく関係性のひとつひとつを大事にしながらアートを発信し続ける姿勢をとる。

10年後を見据えて。

 イベント開催だけがアートによる地域貢献ではなく、作家や観客の意識を地域社会という枠組みに向けることこそが大事であると考える。10年後には、アートといっても何も特別なものではなく生活の一部として当たり前にある状況を作り上げるのが目標である。その為に行える方策の全てを、できる限り行っていくのが当NPO法人アートスイッチの掲げる信条とする。

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